ご挨拶

「人」「地域社会」「地球環境」の
サステナビリティを実現し、
すべての人が笑顔で暮らす未来を創る

お客様本位の業務運営とサステナビリティ経営

 当社は、2023年7月4日に創業135年目を迎えました。
 生命保険は、「共存共栄」「相互扶助」の精神に基づく助け合いによる保障の仕組みであり、創業以来、当社は「お客様本位の業務運営」と「サステナビリティ経営」を実践してきており、事業運営の基本理念に据えています。これからもご契約者の利益を最優先に考えてあらゆる仕事を行い、お客様本位の理念を実現したいと考えています。
 サステナビリティ経営については、「人」「地域社会」「地球環境」の3つの領域に重点を置き、それぞれのサステナビリティを実現し、すべての人が笑顔で暮らす未来を創ることを目指し、グループ全体で取り組んでいます。
 取り組みにあたっては、サステナビリティの向上にどの程度寄与したか、すなわち、成果であるアウトカムを見える化するとともに、役員・職員一人ひとりの仕事と結びつけ、グループ9万名が一丸となって貢献してまいりたいと考えています。

サステナビリティ経営における3つの重点領域

「人」のサステナビリティの向上に向けては、人生100年にわたる安心・安全の提供、希望に満ちた未来世代の育成、多様性と人権の尊重の観点から、生命保険、資産運用、ヘルスケアのサービスを提供しています。
 創業当初から、全国各地で、各地域に暮らす人々を営業職員として採用し、営業職員がその地域で暮らす人々に生命保険を販売するとともに、加入後のアフターフォローを徹底することにより、安心と安全を提供してきました。
 現在は、日本生命を中心とする国内元受会社5社をグループ内に持ち、各社が提供するさまざまな商品ラインアップを、営業職員チャネル、金融機関等の代理店、通信販売、インターネット等のチャネルで販売し、お客様の多様なニーズにお応えするよう取り組んでいます。
 資産運用では、生命保険商品に組み込んでいる資産運用機能の充実に努めるとともに、ニッセイアセットマネジメントで年金運用をはじめとする各種の運用商品を提供しています。また、機関投資家として、ESGテーマ投融資や対話(エンゲージメント)を通じ、投融資先企業の企業価値向上を促すとともに、女性活躍や人権尊重の取り組み等を後押ししています。
 ヘルスケアでは、生命保険はリスクが起こった時に役立つ商品である一方、疾病予防などのヘルスケアはリスクそのものを減らすサービスであり、これらをともに提供することがお客様の一層の安心・安全につながると考え、データ分析サービスや糖尿病予防プログラム等に取り組んでいます。
「地域社会」のサステナビリティの向上に向けては、地域が活力にあふれ、持続的に発展することに貢献する観点から、健康増進や経済振興に取り組んでいます。
 全国約100支社で働く5万名の営業職員が、各地域の自治体等と連携し、地域住民の方々にがん検診の受診勧奨活動を行っています。がん検診の受診率の向上により、地域の健康増進を図るとともに、営業職員が自分の住む地域への貢献を実感し、誇りを感じることで、働く意欲が向上することを期待しています。
 また、企業間のビジネスマッチングの仲介等を通じ、地域の企業の発展と地域経済の振興に貢献してまいりたいと考えています。
「地球環境」のサステナビリティの向上に向けては、全ての生物や人類の生存基盤である地球環境を豊かな状態で維持・発展させ、未来につなぐ取り組みを進めています。その一つが、事業者と機関投資家の両方の立場から取り組んでいる、2050年度における温室効果ガスの排出量ネットゼロの達成です。
 事業者としては、自動車のEV化、営業拠点・保有ビルの省エネルギー化、ペーパーレス化等について、着実な取り組みを進めています。
 また、日本最大の機関投資家の一社であることの大きな役割と重大な責任を強く自覚し、対話と脱炭素ファイナンスの提供を通じ、投融資先企業の気候変動対応を促すとともにサポートを行っています。
 加えて、ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(NZAOA)などの国際的な気候変動対応イニシアティブや国連のPRI(国連責任投資原則)に、理事等として積極的に関わっています。今年度、PRIが日本で開催する年次カンファレンスのリードスポンサーに、保険会社として、またアセットオーナーとして世界で初めて選定されたことを絶好の機会と捉え、ESG投融資の世界的な裾野の拡大につなげてまいります。

環境認識

メガトレンド

 日本と世界において、グローバリゼーションと分断のせめぎ合いや、人口動態の変化、格差の拡大、気候変動、テクノロジーの進化など、いくつもの大きな変化が相当な速度で、かつ同時に進んでいます。当社グループが、これからも「お客様本位の業務運営」と「サステナビリティ経営」を基本理念として、長期に安定的な事業運営を行うにあたり、リスクと機会の両方から適切な対応が必要であるメガトレンドは、「少子高齢化」「テクノロジーの進化」「リスクの多様化と増大化」の3つであると捉えています。

「少子高齢化」について

 少子化がもたらす人口減少はすでに日本で進行しており、今後さらに進んだ場合、当社グループのご契約者と保有契約が減少するリスクが顕在化します。
 一方、高齢化の進展は、健康や長寿へのニーズや、資産運用、相続などのニーズの広がりをもたらすと考えられます。
 また、生産年齢人口の減少と、女性の一層の社会活躍が同時に進むことが、営業職員の確保とチャネルの維持にどのような影響を与えるかも注視すべき重要な課題です。
 さらに、人口動態の変化と地域間の人口移動が及ぼす、一部地域の活力低下や地域間の格差増大に注意を払う必要があります。

「テクノロジーの進化」について

 先端ITの進歩や一般利用の拡大は目を見張るスピードで進んでおり、進化するテクノロジーを、お客様の利便性向上と、業務の生産性向上に積極的に活用することが欠かせないと考えています。
 しかし、導入や活用にあたっては、効率性の観点からの一辺倒な対応だけでなく、営業職員による対面での丁寧な応対を強めるなど、人とデジタルの最適な組み合わせにより、お客様に徹底的に寄り添ったサービスを提供することがこれからも重要であると考えています。
 また、テクノロジーの進化は、事業の変革をもたらす契機としても捉えています。例えば金融サービスと情報技術を結びつけるフィンテックは、既存の保険ビジネスと全く異なるビジネスモデルを生み出す可能性があり、新たなディスラプター、すなわち、既存のビジネスモデルや商習慣を破壊・変革する企業の誕生が当社グループを脅かすリスクになり得る一方で、新たな事業機会を得るチャンスと捉えています。
 実際に、新たな事業開発を目指すイノベーション投資を積極的に行い成果を上げるとともに、他企業と提携し糖尿病予防サービスなどのヘルスケア事業に乗り出しています。

「リスクの多様化と増大化」について

 長期に安定的な生命保険事業を運営するうえで、リスクの多様化や増大化が一層進む状況は、最大限の意識を持って注視し、フォワードルッキングな対応が必要な重要課題であると認識しています。
 すでに自然災害やパンデミックなどの激甚化は現実に起こり、今後もさらなる気候変動やグローバルな人の移動等により、より頻繁にかつ深刻度を増して起こりうることを覚悟しなければならないと考えています。
 また、経済や金融市場の変動や、テクノロジーの進化に伴うサイバーリスクなどについても一層の注視と対応が求められます。

 以上のような課題を正しく捉えたうえで、これからも顧客基盤の拡大、収益力の向上、事業の変革、グループ力の強化、人的資本の充実を一層進め、成長し続ける事業基盤を作り揺るぎないマーケットリーダーに成ることを、グループ全体で目指してまいります。

2022年度の振り返り

 こうしたメガトレンドに加え、2022年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大、世界的なインフレ高進や地政学リスクの顕在化等を背景とした不透明な資産運用環境といった、過去類をみない大きな環境変化が伴う厳しい1年でした。
 決算を総括すると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、新契約が減少する一方、給付金等の支払いが増加しました。また、欧米の大幅な金融引き締めにより、内外金利差が拡大した結果、外国債券等に対するヘッジコストが増加しました。その結果、保険料等収入は増収となるものの、基礎利益は大幅な減益、連結業績についても増収・減益と厳しい決算となりました。
 とりわけ、新型コロナウイルス感染症の保険販売と給付金等のお支払いへの影響は大きいものでした。

保険販売

 主力の営業職員チャネルを中心に、お客様の職場での活動が制限される等、業績回復は道半ばの状況となりました。
 一方、そのような厳しい環境下においても、2022年度を「販売改革元年」と位置づけ、対面とオンラインを組み合わせた販売活動に、営業職員一人ひとりが実直に取り組むことで、活動スタイルの切り替えが着実に進みました。「対面のみ」から「対面とオンラインの組み合わせ」に切り替えているため、短期的には、オンラインでのお客様との関係づくりに時間がかかるものの、中長期的には、営業職員の活動効率が上がり、新しいお客様と出会える等の効果があると確信しています。
 また、2022年度から、営業職員のお客様本位の活動を評価する「ニッセイまごころマイスター認定制度」を導入しました。単純な成果の量だけでなく、お客様にとってより良いサービス提供やご提案をこれまで以上に追求する風土が着実に醸成され始めています。

新型コロナウイルス感染症に係るお支払い

 給付金の支払いの大幅な増加は、減益の要因となりましたが、同時に、多くのご契約者への給付金等のお支払いを通じ、保険会社として最も重要な保障責任を果たすことができました。「今後、50年、60年、何があるかわからないが、何があっても、日本生命は保険金・給付金を払ってくれるであろう」といったお客様の信頼感がなければ、長期間にわたり、保険料を払い続けていただくことはできません。そういった意味で、相互会社である当社が、今回多くのご契約者のお役に立つことができた意義は非常に大きいと考えています。
 一方、感染者数の急激な増加に伴い、給付金請求が大幅に増加したことで、お支払いが遅延し、お客様へご迷惑をおかけした点は、大いに反省が必要であると考えています。今回の経験を役員・職員一人ひとりがしっかりと受け止め、さらなる支払事務の高度化、確実で迅速な支払いに向け、全社を挙げて取り組んでまいります。

2023年度の経営方針

 世界的なインフレ高進等、不透明感の高い資産運用環境が継続する一方、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴う社会活動の活性化等、当社を取り巻く事業環境は徐々に好転していくと想定しています。
 2023年度は、中期経営計画「Going Beyond-超えて、その先へ-」の最終年度として、これまで進めてきた変革をさらなる成果につなげ、成長軌道にのせるべく、取り組みを進めてまいります。
 中期経営計画に掲げる成長戦略の詳細は後続のページに譲り、当社の事業の3つの柱、「保険販売」「資産運用」「グループ経営」そして「人的資本の強化」について、取り組みのポイントをご説明します。

保険販売:業績の進展

 お客様に安心・安全を提供する「保険販売」では、販売業績の進展に向け、主力の営業職員チャネルにおいて、これまでコロナ禍で進めてきた取り組みが実を結ぶことにより、道半ばの状況である業績回復を確かなものとすべく、全支社・全営業拠点が業績を伸ばし、全員が回復・成長を実感することを目指してまいります。

 具体的には、

  1. 新たな営業活動方式を“極める”
  2. 営業職員一人ひとりに対するサポートを“強める”
の2つの軸で取り組みます。

 まず、「新たな営業活動方式を極める」取り組みについては、

  • (1) 対面にオンラインを組み合わせた活動による、お客様のご意向に応じた対応
  • (2) 公的保険等を踏まえたリスクコンサルティングによる、一人ひとりのお客様に最適な保障とサービスの提供
  • (3) 地域の健康増進に向けたがん検診の受診勧奨活動等、地域の課題解決への一層の貢献
を通じ、お客様や地域のお役に立ち、選ばれ続ける営業職員チャネルとなれるよう取り組みを進めます。

 次に、「営業職員一人ひとりに対するサポートを強める」取り組みについては、

  • (1) お客様数や契約の継続状況、保有資格やお客様からの声等を総合的に評価する「ニッセイまごころマイスター認定制度」
  • (2) 場所や時間にとらわれず自学自習できるデジタルコンテンツ等を活用した教育の均質化
  • (3) 人材育成等の中期目標の新設や営業現場への情報発信の充実等、本部からの支援の強化
を通じ、お客様や社会の期待に応え続け、長く安定的に活躍できる営業職員の育成に取り組みます。

資産運用:安定的な利差益の確保とリスク削減の両立

 機関投資家としての役割を果たすための「資産運用」では、収益性と健全性の両立に向けたポートフォリオの変革およびESG投融資の強化を引き続き進め、ご契約者利益の増大と成果であるアウトカム創出による社会課題解決の両立を目指してまいります。
 「ポートフォリオの変革」では、国際分散投融資に徹し、長期に安定した運用収益を上げるという基本方針を原則としつつ、マーケットに対応した機動的な配分を行ってまいります。
 具体的には、円金利資産の長期化やクレジット、海外不動産・インフラ等のオルタナティブ資産の積み増し等の国際分散投融資を進めるとともに、フォワードルッキングなリスク管理を強化すべく、金利上昇シナリオのもとで、含み損の拡大等、多面的な分析を行います。
 「ESG投融資の強化」では、全ての資産クラスにESGの要素を組み入れるインテグレーションに加え、投資先企業との対話であるエンゲージメントについて、EとSの領域における投資先の課題解決の進捗を確認し、複数年にわたる対話を行うことで、投資先の行動変容を促します。さらに、テーマ投融資と脱炭素ファイナンスの枠を引き上げ、企業の気候変動対応等の取り組みを後押しします。

グループ経営:収益力の強化

 日本生命単体だけでは提供できない価値をお客様や地域に提供する「グループ経営」では、ご契約者利益の最大化、すわなち、長期の保障責任を全うするとともに、サービスの充実、配当の安定・充実を図るべく、グループ収益力の強化を一層進めてまいります。安定した収益の獲得には、日本生命単体として収益確保に向けた不断の努力を続けることはもちろん、グループ全体として成長し続ける事業基盤を構築することが不可欠です。

 具体的には、

  1. 国内保険では、お客様の多様なニーズにお応えすべく、競争力のある商品開発やグループ内連携によるさらなるチャネル開拓等、各社の強みを活かし、グループ一体で取り組むこと
  2. 海外保険では、既存出資先の安定的成長と先進国市場開拓への積極展開を進めること
  3. アセットマネジメントでは、国内外の競争力強化等の取り組みを通じ、資産形成ニーズを取り込み、グループの運用力を強化すること
  4. 新規事業では、健康寿命の延伸を目的としたヘルスケアをはじめ、子育て・シニア・イノベーションの各領域で、マーケットの開拓と創造に取り組むこと
を通じ、グループ収益力の強化、そして、ご契約者利益の最大化を進めてまいります。

人的資本の強化

 以上、ご説明いたしました取り組みを支えるべく、人的資本を強化し、変化する労働マーケットへの対応と従業員満足度の向上を一層推進してまいります。
 具体的には、人財価値向上プロジェクトを通じ、「人財育成」と「闊達な風土の醸成」の2軸で、営業職員・内務職員ともに多様な人材の多彩な活躍を後押しすべく取り組んでおり、2023年度については、当社全職員を対象とした賃上げや仕事とライフイベントの両立支援等、さまざまな「人への投資」を進めています。

全ての土台となる「お客様本位の業務運営」と日本生命グループの人材

 これら、あらゆる取り組みの土台となるのは、「お客様本位の業務運営」と日本生命グループで働く「人」です。
 1つ目の「お客様本位の業務運営」について。生命保険会社は、お客様の目線で考え抜き、さまざまなニーズを捉えた最適な保険・サービスを提供するとともに、お客様とお約束したご契約の保障責任を全うすることが求められています。
 お客様の信頼の上にのみ事業が成り立つという認識のもと、お客様の声を基点とした継続的なサービス向上とともに、コンプライアンス教育や本部によるモニタリングの強化等を通じ、不祥事案の未然防止や苦情減少への取り組みを着実に進めてまいります。
 2つ目の「人」について。当社グループで働く職員は、「お客様のために何ができるか」「日本生命グループにできることは何か」という意識を持ち、こうした問いを繰り返しながら、長年培った一人ひとりの知識と経験を総動員し、当社グループならではの価値を創造していかなければならないと考えています。
 これを実現するためには、当社グループの多様な価値観・経験を伴った人材が、多彩に活躍できることが重要です。
 「人は力、人が全て」。
 日本生命、そして日本生命グループで働く大切な仲間とともに、お客様と地域社会をつなぎ、すべての人が笑顔で暮らす未来を創ってまいります。

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