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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第123回 5Gの世界需要額、2030年には168.3兆円に拡大の見通し

2020年5月11日

5Gの需要が見込まれている理由は

 今年に入り、日本でも5G商用サービス開始とのニュースを目にすることが増えたのではないでしょうか。5Gの「G」は「Generation」(世代)の略で、5Gは第5世代移動通信システムを意味します。今後、5Gの世界需要額は年平均63.7%増で成長し、2030年には168.3兆円と、2018年比で約300倍にも拡大する見通しです。
 5Gの普及に対し、なぜこれほどの需要が見込まれているのでしょうか?

図表 5G市場の世界需要額見通し

(出典)一般社団法人 電子情報技術産業協会プレスリリース(無償公開の数字/グラフ/分析コメント【概要PDF】)より筆者作成

 5Gの大きな特徴は3つあります。「高速・大容量」、「低遅延」、「多数同時接続」です。
5Gによって、大容量のデータをより速く、より多くの機器で同時に接続することが可能になるため、人と人、人とモノ、モノとモノのつながりが急速に拡大すると見られています。
 今まで通信につながっていたモノといえば、主にコンピューターやスマートフォンでした。5Gの普及により、電化製品、自動車、工場の機械など、より多くのモノとのつながりが増えるため、今後、5Gの世界需要額は大きく伸びると予想されているのです。

 また、収集した膨大なデータを個人ごと、会社ごと、地域ごとのニーズに合せてカスタマイズしていくことも、5Gの普及によりさらに進むと見られています。

 例えば、ウェアラブル端末などから個人の脈拍や血圧、歩数、睡眠などの健康データを収集し、それをもとに個別に健康管理や改善策をアドバイスするといったサービスなどが考えられます。高齢化社会が進む中でいかに健康にすごせるかは国としても大きな課題です。5Gの活用により、一般的な情報だけではなく、さらに個人に合せたアドバイスが可能になると期待されています。

 ただし、5Gを利用するためのインフラ整備には大きなコストがかかります。また、データを収集することの可否や収集したデータをどこまで活用するかといった問題もあります。遠隔医療や自動運転といった人の命にかかわることには、慎重に対応していく必要もあり、すぐにその恩恵を受けられるわけではありません。

5Gの普及が新たな産業やサービス発展の鍵に

 とはいえ、5Gの普及が新たな産業やサービスの発展について、鍵となることは確かです。世界中の企業で、5Gをどう製品やサービス開発に活かすのか、すでに競争がはじまっています。ニーズに合わせて製品やサービスをカスタマイズすることは昔から日本の企業が得意としてきたことであり、5Gを活かして様々な新しい商品やサービスが開発されることが期待されています。

(ニッセイ基礎研究所 森下 千鶴)


筆者紹介

森下 千鶴(もりした ちづる)

株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部
研究・専門分野:株式市場・資産運用