第3回 ESGとSDGsの違い

2023年7月25日

近年では、ESGやSDGsといった我々の社会や環境の改善を意図する様々な言葉が使われています。しかし、これらの詳細な内容や違いは必ずしも明確に理解されていないかもしれません。今回はESGとSDGsそれぞれの内容や両者の違いについて知ることで、これらについての理解を深めていきたいと思います。

ESGとSDGsについて知るために改めて両者の定義について確認していきましょう。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった造語であり、2006年に国連が「責任投資原則(PRI)」を提唱したことから広く知られるようになりました。
PRIは機関投資家が投資決定や株主としての行動において、ESGを考慮することを求める6つの原則です。このことから、ESGを考慮する投資家から投資を受けるためには、企業においてもESGを考慮することが求められています。

一方で、SDGs(持続可能な開発目標)は2015年9月に開催された国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標です。

こうした両者の成り立ちから分かるように、ESGが投資家や企業を主な対象としたものであるのに対して、SDGsは国際社会や国家間で合意された目標となっています。

両者の相違点や共通点は、以下のように整理することができます。

相違点
  • ESGが投資家や企業を対象としているのに対して、SDGsは国や国際社会を直接的な対象としたものであること
  • ESGがコンセプト(概念)であるのに対して、SDGsは目標であること
  • ESGが期限を持たないのに対して、SDGsが期限を設定していること
共通点
  • 持続的な社会の構築や長期的な成長を目指していること
  • 国際的な社会課題への取組みに関すること
  • 環境、社会、経済を考慮する活動であること
  • 取組みを行うにあたって多くの機関や参加者が連携していること

このように、ESGとSDGsには、その定義や対象に違いはあるものの、どちらもサステナブル(持続可能)な社会の構築を目指して、幅広い取組みを進めている点が共通しています。

企業や投資家がESGに取り組むことはSDGsの達成にもつながっていきます。そして、消費者がESGを考慮して企業や商品を選ぶことは企業や機関投資家にESG取組みを促すことにつながります。一人一人の身近な取り組みがESGやSDGsの達成を含む社会の改善につながっていくと言えるでしょう。

ガバナンス 直訳すると、支配・統治、管理・運営を意味する。
企業におけるガバナンスを、コーポレートガバナンスと呼び、企業がお客様、従業員、仕入先、株主、債権者、地域社会等様々な関係者の立場を踏まえ、適切な意思決定を行う仕組みを指す。
また、実効的なコーポレートガバナンスが企業及び経済全体の発展に寄与すると考えられている。
ESG経営 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の問題への取り組みを重視した経営を指す。
利益の追求だけでなく、様々な関係者の立場や利益に配慮した経営であり、持続可能な成長に資すると考えられている。
ESG投資 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の問題への取り組みを評価した上で投資先を選別する投資を指す。
利益などの財務情報だけでなく、ESGといった財務情報以外の情報にも着目することにより、経済的なリターンの追求とともに、ESG問題の解決を目指す投資である。
サステナブル 「Sustain(維持)」と「Able(可能)」を組み合わせた言葉で、直訳すると「持続可能な」という意味を持つ。近年では、特に地球環境や経済、社会の持続可能性を指す言葉として用いられている。

(ニッセイ基礎研究所 原田 哲志)

筆者紹介

原田 哲志(はらだ さとし)

株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任
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