【保険の基礎】医療保険とは?仕組みと種類をわかりやすく解説

2023.05.23

病気やケガで治療が必要になったとき、医療保険に加入していれば経済的な負担が軽減されるので安心です。万が一のときに備えて「医療保険はどのような仕組みなのか」「医療保険にはどのような種類があるのか」知っておきたい人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、医療保険の仕組みや種類などをわかりやすく解説します。この記事を読めば、「民間医療保険は不要なのか」「保険料はどのくらいかかるのか」などの気になる疑問も解消できるので、ぜひこのまま読み進めてみてください。

医療保険とは

医療保険とは、病気やケガで治療する際に医療費の経済的な負担を軽減する制度です。大勢の人がお互いのためにサポートし合う「相互扶助」という関係で成り立っています。

保険に加入している被保険者が出し合ったお金で準備資金を作り、必要な人に医療費の一部が支払われる仕組みです。

医療保険には「公的医療保険」と「民間医療保険」の2種類があります。

公的医療保険は、要件を満たすすべての国民に加入が義務づけられている社会保障制度です。一方の民間医療保険は、社会保障制度でカバーできない自己負担額を賄うための任意保険なので、加入するかどうかは個人の意思で自由に決められます。

公的医療保険

公的医療保険は1961年に始まった医療保険制度で、国や地方自治体などの保険団体によって運営されています。

日本では、公的医療保険に「国民皆保険制度」が採用されています。国民皆保険制度とは、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入し、お互いを支え合う制度です。病気やケガで治療が必要になった場合でも、国民皆保険制度によって国民の経済的な負担が軽減されます。

国民皆保険制度を採用している国は少なく、海外では、例えばフランスやドイツが挙げられます。一方、アメリカでは65歳以上の高齢者と障がい者、低所得者を対象とした公的医療保険しかありません。医療保険制度改革により、公的医療保険の対象者以外の多くは民間医療保険への加入を検討することになりますが、高い保険料などが理由で保険に加入していない人も少なくありません。

これに対して日本には国民皆保険制度があるため、所得に関わらずすべての国民が平等かつ安心して医療を受けられます。

公的医療保険制度の種類

公的医療保険制度には複数の種類があり、それぞれ運営元や加入対象者が異なります。

健康保険・船員保険・共済保険は、会社員や公務員などの職域を土台とした被用者保険です。被用者保険の対象者以外の人は、地域保険の国民健康保険または高齢者医療制度の後期高齢者医療制度への加入が必要です。

国民健康保険に加入している場合でも、基本的には75歳を迎えると後期高齢者医療制度に切り替えられます。

■ 医療費の負担割合

すべての国民は何らかの公的医療保険に加入しているため、医療機関の窓口で支払う医療費の負担が軽減されます。自己負担額は加入している保険に関わらず、基本的には年齢によって異なります。

参考:厚生労働省「我が国の医療保険について」P4

6歳(義務教育就学後)以上70歳未満の人の自己負担額は、3割負担です。例えば保険適用される医療費の総額が10,000円だった場合、窓口で支払う金額は3,000円になります。

従来は、70歳以上の高齢者の基本的な自己負担額は1割負担でした。しかし、2006年の健康保険法等の一部改正により、2008年4月から70歳以上74歳未満の高齢者は2割負担に引き上げられました。現役並みに所得がある場合は、従来と変わらず3割負担です。

現役並み所得者とは、本人および同一世帯で住民税課税所得が145万円以上ある人を指します。75歳以上の高齢者の自己負担額は、法改正後も基本的には1割です。ただし、一定以上の所得がある場合は2割負担、現役並みの所得がある場合は3割負担になります。

また、各自治体の医療費助成制度により、医療費の自己負担額が無料または軽減されるケースも珍しくありません。例えば東京都内では、2023年4月より高校生の医療費の自己負担額を一部助成する制度がスタートしました。

主な給付内容

公的医療保険の給付には、医療給付と現金給付の2種類があります。医療給付とは、医療機関の窓口で支払う自己負担額以外の医療費に対する給付で、「現物給付」と呼ばれることもあります。

一方の現金給付は病気やケガ、出産、死亡した場合に、加入先の保険から一定の金額を現金で受け取れる給付です。

■ 【医療給付】

医療給付の種類と内容は、次の通りです。

参考:厚生労働省「我が国の医療保険について」

■ 【現金給付】

現金給付の種類と内容は、次の通りです。

参考:厚生労働省「我が国の医療保険について」

民間医療保険

医療保険には、公的医療保険の他に民間医療保険があります。民間医療保険とは、生命保険会社や損害保険会社などの民間の企業が提供している保険商品です。公的医療保険のように加入が義務づけられていないため、個人の自由意思で加入の有無を決められます。

民間医療保険の種類は、医療機関に支払う自己負担額を軽減する一般的な医療保険だけではありません。女性特有の病気を手厚く保障する女性保険や、入院時の収入をサポートする就業保険など、公的医療保険に比べて種類が豊富です。

医療保険
女性保険
がん保険
特定疾病保険

また、民間医療保険では、がんや急性心筋梗塞、脳卒中などの3大疾病への保障を手厚くできる特約をつけられるケースがほとんどです。個人の希望に応じて加入できる保険の種類が多いため、公的医療保険でカバーできない経済的な負担の軽減につながります。

医療保険の種類

民間医療保険には定期型と終身型、貯蓄型と掛け捨て型などのさまざまな種類があります。それぞれ特徴が異なるため、自分に合った保険商品を選ぶことが大切です。

■ 【定期と終身】

定期型と終身型は、保険期間や保険料に違いがあります。定期型は、5年や10年などの保険期間が決まっているタイプです。一方の終身型の保険期間は終身で、解約しない限りは一生涯の保障が受けられるタイプです。

定期型は更新の度に保険料を計算し直すため、基本的に年齢を重ねるにつれて保険料も上がります。終身型の場合、保険期間の途中で特約を追加しなければ保険料が変わりません。

■ 【貯蓄型と掛け捨て型】

貯蓄型と掛け捨て型は、支払った保険料の行方に違いがあります。貯蓄型は一定の貯蓄性があるため、解約や満期のタイミングで解約払戻金や満期保険金を受け取ることが可能です。

一方の掛け捨て型は貯蓄性がなく、解約や満期のタイミングで受け取れる解約払戻金や満期保険金もほとんどありません。

貯蓄型は、保障機能を持ちつつ将来的な資金としても備えられるため、貯蓄が苦手な人におすすめです。掛け捨て型は保険料が安く、保険期間内は手厚い保障が受けられます。

受け取れる給付金

民間の医療保険で受け取れる給付金は、保険商品の種類や契約内容によって異なります。例えば病気やケガで治療した場合、民間の医療保険で受け取れる給付金があります。

入院給付金は民間の医療保険の基本的な保障で、入院1日あたり契約書に記載されている金額を現金で受け取れます。

手術給付金は、病気やケガで手術をした場合に保険会社から支払われる給付金です。ただし、対象の手術は公的医療保険対象の約1,000種類、または保険会社指定の88種類のいずれかに限られます。

この他にも、厚生労働大臣が承認する高度または先進的な医療技術を受けた場合や、所定のがんと診断された場合に給付金が支払われます。

医療保険に関するよくある質問

最後に、医療保険に関するよくある質問を紹介します。

公的医療保険があるなら民間の医療保険は不要?

日本は国民皆保険制度を採用しているため、すべての国民は何らかの公的医療保険に加入する必要があります。医療機関等の窓口での自己負担額は1~3割で済むため、民間の医療保険は不要だと考える人もいるかもしれません。

しかし、公的医療保険の対象外になる医療もあります。基本的に健康保険適用外になる治療や費用は、全額自己負担になります。健康保険適用外になる主な治療や費用は、次の通りです。

入院時食事療養費
差額ベッド代
先進医療
自由診療

厚生労働大臣が承認する先進医療は、健康保険適用外のものも多いのが現状です。例えば、放射線治療のひとつである重粒子線治療の技術料は平均で約318万円ですが、この治療を受けると全額自己負担しなければなりません。

また、入院で仕事を休むと収入が減る可能性があります。保険適用外の医療費や経済的な不安に備えるなら、民間の医療保険の加入を検討しましょう。

医療保険の保険料はいくらかかるの?

医療保険の保険料は一律ではなく、人によってさまざまです。また、公的医療保険と民間医療保険では、保険料の考え方や計算方法が異なります。

公的医療保険の場合

健康保険や共済組合などは、被保険者の標準報酬月額や標準賞与額などの保険料率に応じて保険料が決まる仕組みです。保険料は被保険者がすべて負担するのではなく、事業主が半分以上を負担することになっています。

国民健康保険や後期高齢者医療制度は、所得に応じて定められる金額に加えて、被保険者ごとに定額の保険料が徴収されます。

■ 民間医療保険の場合

民間医療保険の保険料は、純保険料と付加保険料で構成されています。純保険料は、保険金や給付金の支払いに備えられているお金です。純保険料は、生存保険料と死亡保険料に区分されています。生存保険料は解約払戻金や満期保険金の支払いに、死亡保険料は死亡時の支払いに備えられています。

付加保険料は、保険会社の人件費や広告宣伝費などの経費にあたるお金です。保険会社によって保険料が異なるのは、経費の違いが大きく影響しているからです。

まとめ

医療保険には、公的医療保険と民間医療保険の2種類があります。日本の公的医療保険は充実しているため、病気やケガで治療が必要になった場合でも自己負担額は1~3割で済みます。

しかし、公的医療保険では仕事を休んだときの収入保障はなく、カバーできない医療費も多いのが現状です。医療費が高額になる可能性もあるため、万が一に備えて民間医療保険への加入を検討しましょう。

医療保険をご検討中の方へおすすめの保険商品

保険選びにお悩みの方へ

当記事に記載の内容は2023年3月現在の公的制度に基づいております。
当記事に記載のデータについては、あくまで出典元からの引用によるものであり、当社の保険商品の支払事由とは異なる場合があります。

監修者:宮里 恵
(ファイナンシャルプランナー/M・Mプランニング 代表)

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナー(FP)に。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目。
主婦FPとして等身大の目線でのアドバイスが好評で、家計・保険・老後・相続などの個別相談を主に、マネーセミナー、お金の専門家として記事の監修、テレビ取材なども受けている。

※当社から株式会社アイレップに依頼し記事を執筆していただいたものです。

生23‐4340,営業企画部
ページtopへ

保険を検討中のお客様

Copyright © 日本生命保険相互会社