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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第91回 年間40万円まで、「つみたてNISA」とは?

2017年9月1日

貯蓄から資産形成へ

 近年、「貯蓄から資産形成へ」の旗印のもとで個人の資産形成をサポートする制度が充実してきています。2014年にNISA(ニーサ)がスタートし、今年(2017年)から個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)の加入対象者が拡大し、基本的に60歳未満の誰でも加入できるようになりました。その流れの中、2018年に導入される新たな制度があります。
それが、「つみたてNISA」です。

利益が出れば出るほどメリットが大きい非課税口座

 そもそも2014年から始まったNISA(以後、現行のNISA)とは、個人のための税制優遇制度のことです。通常、株式や投資信託などに投資して利益が出た場合、約20%(※1)の税金がかかります。それがNISA口座を使えば税金がかからず、得た利益は丸々自分のものになります。

 利益が出なければそもそも税金を徴収されませんので、非課税口座の効果はありませんが、利益が出ると利益に比例して徴収される税金は大きくなります。利益が出れば出るほど効果が大きい制度といえます。

小口かつ長期化された積立専用口座

 現行のNISAでは購入頻度や時期など制限はありませんでした。そのため現行のNISAでも積立型の投資はできました。ただ、実際には利用しにくいという声がありました。そういった声を受けて積立型の投資に特化した税制優遇制度が、2018年に導入される「つみたてNISA」です。
 なお、ここでいう積立型の投資とは、毎月決まった日に決まった金額の金融商品を機械的に購入するような投資のことです。

 「つみたてNISA」では金融商品の購入方法以外に、現行のNISAから変更された点がいくつかあります(詳しくは<表>を参照)。最大の変更点は運用期間が最長5年から20年に大きく拡張された点です。運用期間が長ければ長いほど利益が出やすく、また大きくなる可能性があるため、より長い期間運用できることになったことは良い点といえます。
 その代わり、投資できる金額は現行のNISAの年間120万円から40万円と縮小されます。毎年の金額は小さくなりますが、毎年累積すると「つみたてNISA」では運用金額が最大800万円(=40万円×20年)となり、現行のNISAの600万円(=120万円×5年)よりも大きくなります。まさに、長期的にこつこつ投資してもらえるように変更されたといえます。

<表>「現行のNISA」と「つみたてNISA」の主な違い

  • 金融庁HP「NISA特設サイト」登載資料より筆者作成

投資初心者にも優しく

 また、「つみたてNISA」では購入できる商品が選びやすいように現行のNISAと比べて対象商品が絞られています。金融商品も販売手数料がかからず、年間のコストも一定以内に収まっているといった条件を満たした公募株式投資とETF(上場投信)のみです。一見、選択肢が減ってしまうことはデメリットに感じるかもしれません。しかし、選択肢が多いと選ぶのに困ってしまうことがよくあります。
 特に、金融商品に馴染みの薄い投資初心者だとなおのことだと思います。そのため、「つみたてNISA」は現行のNISAと比べて投資初心者でも活用しやすくなっているといえます。

20歳以上ならだれでも

 「つみたてNISA」は、現行のNISAと同様に20歳以上の国内居住者なら誰でも利用することができます。ご自身の資産形成の強い味方として、既に現行のNISAを活用している方もそうでない方も、「つみたてNISA」(※2)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

(※1) 2017年現在では、所得税及び復興特別所得税15.315%+住民税5%
(※2) 現行のNISAと「つみたてNISA」を同時に活用することはできないため、どちらかを選択する必要があります。

(ニッセイ基礎研究所 前山 裕亮)

筆者紹介

前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)

株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部、研究員
研究・専門分野:株式市場・資産運用