ANNUAL REPORT 2021 menu

トップメッセージ

はじめに

新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るう中、お亡くなりになられた方々に対しまして、謹んで哀悼の意を捧げるとともに、ご遺族の方々に心よりお悔やみ申しあげます。また、感染に苦しんでおられる皆様、影響を受けられた皆様に心よりお見舞い申しあげます。併せて、最前線で献身的に治療・感染予防にあたってこられた医療関係の皆様をはじめとして、生活に欠かせない社会インフラを支えてこられた皆様に、心から敬意を表するとともに、深く感謝を申しあげます。

同感染症の流行は、経済活動や、私たちの生活に大きな影響、変化を与えています。

この難局を乗り越えなければならない、まさに今こそ「お客様への保障責任を全うする」という生命保険会社の責務を果たし、お客様への信頼に応えるときであると認識しております。

当社では少しでもお客様にお役立ていただくため、保険料払込期間の延長等の特別取り扱いや、地域、社会に対して貢献するべく、医療関係機関への寄付など、さまざまな支援を行ってきました。

こうした新型コロナウイルス感染症が流行する中においても、「お客様本位の業務運営」をこれまでと変わらずに最重要視しながら、同感染症に関する各種の取り組みに加え、デジタル社会や高齢化社会の対応に重点的に取り組み、お客様や職員の声を日々の業務運営に反映することで、各領域で時代を捉えたお客様本位の業務運営を実践してまいります。

生命保険のご案内については、お客様のご意向に合わせて、対面でのご案内と、デジタルツールを活用した非対面でのご案内をオーダーメイドで提供しております。

お客様からのご要望の変化や、社会の変化を見据え、それに応えることのできる会社であり続けるためにも、日本生命に脈々と引き継がれてきた「お客様を大切に想う気持ち」を全役員・職員が持ち、伝統をつないでいくとともに、変化を積極的に取り込み、今まで以上に変革への果敢なチャレンジを続けてまいります。

「全・進 -next stage-」を振り返って

2017年度から、「人生100年時代をリードする日本生命グループに成る」ことを掲げ、中期経営計画「全・進 -next stage-」を推進してきました。この間、「超低金利下での収益性向上」「日本生命グループの社会的役割の拡大」「グループ事業の着実な収益拡大」に各分野で取り組んでまいりました。

「全・進 -next stage- 」で掲げた4つの数量目標についての達成状況を振り返りますと、お客様数は1,447万名(国内グループ)、保有年換算保険料は4.50兆円(国内グループ)、自己資本は7.2兆円(単体)と、目標を上回る成果を上げることができました。一方でグループ事業純利益は金利低下による大樹生命の販売減やオーストラリアの生命保険子会社であるMLCの業績悪化等により530億円と計画未達となりました。このように、グループ事業による収益拡大は道半ばであるものの、生産面、運用面においては、掲げた目標を遂行することができました。

生命保険事業を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う生活様式の変化に加え、人口減少や高齢化の進展、超低金利の継続、デジタル化の急加速など、創業以来経験したことのない大きな転換期を迎えています。

これまで得られた成果と課題を踏まえ、次なる目標として、今年度からは新たな3カ年経営計画に全社一体となり取り組んでまいります。

全・進 -next stage- での数量目標

全・進 -next stage- での数量目標

新中期経営計画
「Going Beyond-超えて、その先へ-」について

少子高齢化、デジタル・ダイレクトニーズの拡大、新型コロナウイルス感染症の蔓延による生活様式の変化など、社会構造・生活環境が大きく変化する中、生命保険会社に対するお客様からの期待や役割は一層高まっています。

日本生命とグループ全体が、これまでの事業レベルを超え、さらなる成長への道筋を確かなものにするという決意を込め、新たな中期経営計画に「Going Beyond -超えて、その先へ-」と名付けました。この新中期経営計画のもとお客様数拡大を通じた「生産の早期回復・向上」「収益力・健全性の向上」を目指します。

数量目標としては、お客様数1,490万名(国内グループ)、保有年換算保険料4.55兆円(国内グループ)、基礎利益6,000億円(グループ)を安定的に確保、自己資本9兆円(グループ)としております。各グループ成長戦略の推進・社会的役割のさらなる発揮を通じて、「人・サービス・デジタルでお客様と社会の未来を支え続ける」日本生命グループを目指し、邁進してまいります。

グループ成長戦略① 国内保険市場の深耕

グループ成長戦略の一つ目は、「国内保険市場の深耕」です。

お客様のニーズが多様化し、マーケットも大きく変化する環境に対応するためには、当社の最大の強みである営業職員チャネルを、デジタル時代に合わせて高度化すること、お客様とのつながりを強化することが不可欠だと考えています。

また、大樹生命、ニッセイ・ウェルス生命、はなさく生命における戦略の強化とシナジー発揮により、グループ一体でのマーケット開拓と商品・サービスの拡充を推進してまいります。

デジタル時代の活動の高度化

当社がこれまで築き上げてきたフェイス・トゥ・フェイスでのご案内活動に、デジタルを組み込み、お客様のニーズに、より応えられる活動と組織の高度化を進めていきます。また、デジタル等をフル活用した長く安定的に活躍できる職員育成を通じて、一人ひとりのお客様のご意向に沿った、より価値の高いサービスを提供するデジタル時代の新たな活動モデルを確立してまいります。

具体的な取り組みとして、営業職員用スマートフォン「N-Phone」を全営業職員に配備し、AI等の技術を駆使することで、お客様へのタイムリーな情報提供やお客様対応力の強化を図ります。

また非対面での契約手続き等を可能とする画面共有システムや、商品説明動画コンテンツを活用することで、お客様の状況に応じた形でのサービスを展開していきます。

加えて、お客様ご自身でプランが設計可能となる保険料シミュレーションの提供や、オンラインによる情報提供機会を充実させるため、企業別のオーダーメイド型福利厚生セミナー等の提供、企業の多様なニーズにお応えする情報提供サイト新設などにも取り組んでおります。

これらの取り組みを進め、より多くのお客様にきめ細やかなサービスを提供するとともに、一層のコンサルティング力向上を図ってまいります。

お客様に寄り添ったサービスの提供

当社では、営業職員が年に1回、お客様一人ひとりに対して、入院や手術等の有無、契約内容等のご確認をさせていただく「ご契約内容確認活動」を2007年から実施しております。「ご契約内容確認活動」をお客様への保障責任を果たすための中心的な活動と位置付け、今後もお客様に寄り添ったサービスの提供を続けてまいります。

また、お客様の利便性向上のため、日本生命アプリで可能な手続きを順次拡充しております。契約の確認や住所変更はもちろんのこと、健康、介護についての無料電話相談や健康関連サービスも簡単にご利用いただくことが可能です。

ご高齢のお客様に対しても、認知症、介護等への対応として、事前に登録いただいたご家族に契約情報をお知らせする「ご契約情報家族連絡サービス」の提供や、ご高齢のお客様専用ダイヤル設置を通し、安心して契約をご継続いただくためのサービスを展開しております。

商品・サービスの拡充

当社の主力商品である「みらいのカタチ」のさらなるラインアップ拡充として、7月から「入院継続時収入サポート保険“収 NEW 1”」を発売しました。当商品は、入院が14日(2週間)以上継続した場合、給付月額の6カ月分の収入サポート給付金を一時金でお受け取りいただくことにより、入院に伴う収入減少に備えることができます。

さらに進化した組み合わせ自由な保険「みらいのカタチ」で、これからもお客様の生き方にぴったりと寄り添う保障を提供していきたいと思います。

またグループ一体でのマーケット開拓として大樹生命、ニッセイ・ウェルス生命、はなさく生命のそれぞれの強みを生かしたチャネル強化・商品提供を通し、お客様へ最適な商品・サービスをお届けしていくとともに、新市場にも積極的に進出していきます。

その一つとして、はなさく生命ではWeb販売も開始します。これにより、これまでアプローチが難しかったお客様にWebやデジタルマーケティングを活用して競争力のある商品を提供することが可能になります。

さらに、生命保険だけでなく、損害保険も含めて、独自性のある保険商品を提供し、特定ニーズ市場を開拓するために、少額短期保険会社の新設に向けて準備を進めております。

これまでの取り組みをさらに加速させ、“人生100年時代”を支える、社会に役立つ保険商品の提供に取り組んでまいります。

代表取締役社長 清水博

グループ成長戦略② グループ事業の強化・多角化

グループ成長戦略の二つ目は、「グループ事業の強化・多角化」です。低金利の長期化や社会構造が大きく変化する環境下で、当社が相互会社として「契約者利益の最大化」を達成するために、各事業の強みを生かし、収益力の向上に取り組んでまいります。

アセットマネジメント事業では、国内における競争力向上と海外でのさらなる成長を通じ、資産形成ニーズの取り込みとグループ生命保険会社の運用力強化を目指します。

国内における競争力向上に向けた取り組みとして、日本生命と大樹生命が持つクレジットとオルタナティブの運用機能を、ニッセイアセットマネジメントに移管することにより、運用力の引き上げを図ります。

これに伴い、ニッセイアセットマネジメントは、クレジット投資とオルタナティブ投資で本邦有数の運用体制を有する資産運用会社となり、受託資産残高は15兆円から29兆円へ大きく増加しました。

資産の長期、安定運用のノウハウを活用し、一層質の高い資産運用サービスの提供を行うとともに、デジタルツールの開発等を通じ、機関投資家等のポートフォリオ状況、市場環境を踏まえたソリューション営業の強化にも取り組みます。

加えて、海外でのアセットマネジメント事業のさらなる成長に向けては、ETF、オルタナティブ等の商品ラインアップ拡充やデジタルを活用した販売促進に取り組むとともに、投資、経営管理態勢を強化してまいります。

海外保険事業については、投資、経営管理態勢の強化や地域統括拠点の機能強化など、ガバナンス態勢を引き続き強化することで、収益基盤を確立し、長期安定的な収益獲得を目指します。

これらに加え、「グループ事業の強化・多角化」を進めるうえで、先端技術・データを積極的に活用するとともに、ヘルスケア、子育て支援、高齢社会対応の各領域で、新たなサービス提供や新規事業の展開をすすめていきます。

先端ITの革新による事業環境の変化に対応するため、2020年4月に、当社グループの新しいビジネスを創出するオープンイノベーション拠点として、「Nippon Life X」を開設しました。グローバル4 極(東京・シリコンバレー・ロンドン・北京)での活動や、V Cファンド、個別企業へのイノベーション投資を通じ、新たな商品、サービス開発、市場開拓に取り組んでおります。また、2020年度からは社内起業プロジェクトを展開し、423件の応募がございました。その中から選考した案件の事業化を目指すとともに、今後、継続的にアイデアを募集することで、社内にイノベーション文化や風土を浸透させたいと考えております。

グループ成長戦略③ 運用力強化・事業費効率化

グループ成長戦略の三つ目は、「運用力強化・事業費効率化」です。今後も低金利の継続が見通される中で、運用力の強化と事業費の効率化については、これまで以上に取り組む必要があります。資産運用面では、ポートフォリオの変革と、ESG投融資の強化を推進してまいります。円金利資産の長期化を通じたリスク圧縮や、海外を中心としたクレジットの積み増し、リスク性資産の一層の国際分散を進め、安定的な利差益確保とリスク圧縮を目指します。

ESG投融資の強化については、全ての資産の投融資プロセスにESG要素を組み込む、ESGインテグレーションを4月から開始しました。

2017年度から2023年度のテーマ投融資は、「1.5兆円」を数量目標として設定しており、ソーシャルボンドへの投資や、インパクト投資等を実施してまいります。

ESGを軸とする投融資判断を資産横断的に、より一層推進していくため、財務企画部内に「ESG投融資推進室」を新設しました。ESGに関する調査・研究・分析、各国の規制動向調査、リスク計測に係る調査や計測結果を踏まえた改善、さらに、日本生命グループのESG投融資取り組みを推進していきます。

加えて、事業費効率化については、RPAやAI-OCRの導入、既存業務の見直しを通じて、全社を挙げたコスト削減を進めております。同時に継続的な成長に向け、デジタル化への対応や新規事業の開発にも、追加投資を積極的に行っていきます。

新たな活動や働き方の推進・高度化に全社一丸となって取り組み、事業費の効率化を実現することで、今後の成長の原動力にしてまいります。

グループ経営基盤の強化

「ERM*推進」、「デジタル活用」、「人材活躍」の3領域を重要なグループ経営基盤として強化してまいります。

まず「ERM推進」については、グループ各社においてリスク・自己資本・リターンそれぞれの戦略を高度化するとともに、グループの中心である当社において、グループ全体にわたる経営管理態勢を強化します。この推進を通じて、超低金利下など、いかなる環境においてもグループの着実な成長を実現できるよう、経営基盤の強化を進めていきます。

「デジタル活用」としては、あらゆる領域でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるべく、2019年から2023年までのデジタル5カ年計画をスタートしました。2020年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を極小化するために、販売現場のDXを前倒しかつ急ピッチで進めました。5カ年計画の後半3年間についても、販売現場のさらなるDXや、お客様利便性の向上に取り組むとともに、デジタルを活用した新規事業を推進していきます。

「人材活躍」に向けた取り組みにおいては、一人ひとりが持つ個性を輝かせ、可能性を花開かせるべく、私自身が先頭に立って、人材育成に取り組みます。

専門人材の育成強化に加え、女性やベテラン層の活躍推進に向け、育成プログラムやキャリア開発支援の拡充を進めるなど、人材の多様化、高度化を通じた経営戦略を支える人材育成のために注力しております。

推進にあたっては、これまでの経験や知識・スキルを見える化し、専門性の強化や、キャリアビジョンの実現に向けた後押しを実現していきます。

多様な人材が多彩に活躍し、組織パフォーマンスを向上させるため、ダイバーシティとインクルージョン、働きがいの向上、働き方の変革、健康増進などの取り組みを通して、闊達な職場風土を醸成してまいります。

*ERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント):経営目標を達成するために、会社を取り巻くリスクを網羅的・体系的に捉え、それらを統合的かつ戦略的に管理・コントロールすること

代表取締役社長 清水博

今日と未来を、つなぐ。

当社は、お客様と社会の「今日」にしっかりと寄り添い、安心した「未来」をお届けし続けるという想いを込め、「今日と未来を、つなぐ。」を、今年度から新たに企業メッセージといたしました。

全役員・職員がこの想いを胸に、お客様に寄り添った価値の高いサービスを提供していくことが、お客様の生活に安心をもたらすことにつながると考えています。

また、お客様と社会に常に誠実に向き合うために、お客様本位の業務運営を全ての取り組みの基本とし、デジタル社会や高齢化社会の対応に重点を置きながら、お客様が真に求める商品、サービスの提供と長きにわたる保障責任の確実な全うという使命を果たしてまいります。

サステナビリティ経営については、安心、安全で持続可能な社会の実現に向けて、カーボンニュートラルに取り組み、自社排出量の削減に取り組んでいます。また機関投資家としてESG投融資推進を通じたポートフォリオ排出量削減を推進することで、2050年でのCO2排出量ネットゼロを達成し、脱炭素社会の実現に貢献していきたいと思います。

また、当社は東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるゴールドパートナー(生命保険)として、「Play, Support. さあ、支えることを始めよう。」をスローガンに、オリンピック・パラリンピックの感動を全国に届けるべく、さまざまな取り組みを展開してまいりました。今後もスポーツを通じた地域社会の活性化に取り組んでいきたいと思います。

最後に

当社は、これまでも長期的な視点から、健全で堅実な経営に努め、大規模な災害・感染症や国難ともいえる状況下でも、確実に保険金等のお支払いを続けてまいりました。

昨年度来、新型コロナウイルス感染症がもたらす大きな試練に見舞われていますが、日本生命グループには長い歴史の中で、幾多の逆境を乗り越え、保障責任を果たしてきた歴史と自負があります。

どのような状況下においても、生命保険事業の使命は、保障責任を全うし、お客様に「安心・安全」をお届けすることであります。

そして日本生命には、その使命を果たすべく、お客様を大切に想い、日々奮闘する7万名を超える職員がおります。

「人は力、人が全て」です。

お客様を大切に想う、尊い気持ちを日本生命グループの全員が持ち、日々の業務に取り組むことで、中長期の経営ビジョンである「揺るぎないマーケットリーダーに成る」ことを実現し、お客様から一層の信頼をいただける、新たな日本生命グループの発展に向けて、全員が一丸となり、取り組みを進めてまいります。

引き続き、ご支援、ご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。

2021年7月

代表取締役社長 清水博

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